「東京西部」の描図法・区分

はじめに

本ページでは、「東京西部」の原図を直接確認して得られた知見にもとづき、新たに整理した区分とその特徴を紹介します。

(1)従来の文献における「東京西部」の印刷図の描図法

清水編(2004)では、「東京西部」の印刷図について、表現上の差異から5つの描図法が認められるとして、下表のように詳細な分類と説明を行っています。

清水編(2004)による「東京西部」の印刷図の描図法
分類 描図法の説明
1小群 ・地図上で表された線は繊細で、植生も含め記号の大きさは適正で、製図も丁寧である。
・鉄道は軌条ごと(複線は2本)で表現され、駅(停車場)はホームごとに概形が描かれている。
・表現上特記できるのは、畦畔の茶園・桑園が、地類界記号上に茶・桑記号を重ね描きすることで表現をしている。武蔵野台地上の景観の特徴を表わすのには優れた方法であり、この描画法は第二次大戦後の3千分1等の大縮尺地形図(都市計画図など)に継承されている。
・1m間隔の等高線(首曲線)は、台地上の小起伏のみならず、段丘崖の形状を忠実に表現している。
・昭和17年6月から18年3月にかけて測図されたもので、主として中央線沿線に見られ、この地図群中、最も優れている。
2小群 ・この小群のみに特定名称にあたる「三千分一地形図」と、図郭外右側上に表現されており、記号等は1小群よりやや大きいが、丁寧である。
・等高線間隔は5m、丘陵地を含む地域で、平坦地では物足りないが、丘陵等での等高線間隔としては適正に思われる。
・鉄道は昭和十七年式のように単線・複線を表現し、駅の乗車口方向が黒抹で示されている。
・昭和19年3月・5月の測図部分で図群の西辺と小野路、図師付近の多摩丘陵である。
3小群 ・小縮尺で描画を行い、拡大したと思われるもの。
・集落名や神社などの注記は清刷を貼り込んでおり、鉄道は2群と同じ昭和十七年式の単線・複線で表現、駅の乗車口方向が黒抹で示されている。
・等高線間隔は5m、全体に図柄は粗い。
・図群の北東部大泉から石神井付近に特徴的で、昭和18年9月から12月にかけて測図された地域である。
4小群 ・前3小群がベースだが、文字等は描き文字が多く、図から受ける印象は2小群との混合形であり、注記文字のごく一部に清刷が貼り込まれている。
・最も広い範囲で、昭和18年9月から19年2月にかけて測図されている。
5小群 ・4小群より文字が大きく読み易い。

(2)「東京西部」の新しい区分(区分名称の数字は該当図葉数)

しかし、「東京西部」の原図をよく観察してみると、上表で示された2小群~4小群の図にそれほど明確な差がなく、むしろ図の縮尺や表現内容で区分した方が「東京西部」の特長を捉えられると考え、新たに以下の3つの分類に再区分しました。

「東京西部」の新しい区分
区分名称 縮尺 清水編(2004)との対応 特徴(簡潔)
詳細原寸図(38) 1/3,000 1小群 精密・密度高い
原寸図(56) 1/3,000 5小群 原寸だが繊細さ不足
縮小図(167) 1/4,000 2~4小群 縮小しているが緻密

1)詳細原寸図の例と特徴
1/3,000の縮尺で、昭和17年6月から昭和18年3月にかけて作成された図です。地図上の線は非常に繊細で、植生を含む記号の大きさも適切に整えられており、製図はきわめて丁寧です。等高線間隔は1mで、台地上の小起伏や段丘崖の形状を忠実に表現しています。
「東京西部」の原図群の中でも、最も完成度の高い図といえます。

詳細原寸図の説明

2)原寸図の例と特徴
同じく1/3,000の縮尺で、昭和18年4月に47面(印刷図未作成)、同年11月に9面が作成されています。等高線間隔は5mで、注記は大きく視認性に優れていますが、他の2種と比べると線の繊細さに欠けます。原図用紙に地形を“複写”したように見え、図郭外に記されている修正指示を加筆した箇所以外、手書きで描いている様子が感じられません。

原寸図の説明

3)縮小図の例と特徴
1/4,000の縮尺で作成され、他の2種より一回り小さい図面です。昭和18年9月以降に作成された図はこの描図法が採用されており、「東京西部」全体の約64%を占めます。等高線間隔は5mで、墨のほか鉛筆による補描が行われています。

縮小図の説明

本ページの内容は、主に清水(1996)、清水編(2004)を参照した。詳細な参考文献は「参考資料」を参照。