「東京西部」の地物の位置精度

はじめに

「東京西部」は、戦前に空中写真測量(測図)によって作成された多面体図法の大縮尺地形図です。本ページでは、地図に描かれている主要な地物の位置精度を、地理院地図や2万5千分1地形図、DEM等と比較して検証した結果をまとめています。
検証対象は、基準点(三角点)、玉川上水、道路、鉄道、等高線、河川堤防の6種類です。なお、計測はすべて画面上で行いました。

精度検証位置図

検証結果

(1)基準点(三角点)
戦前に設置され、現在も同位置に残る12点の三角点を比較したところ、2点を除き中心点のずれは約5m以内でした。これは非常に高い位置精度であり、当時の空中写真測量技術の高さを示しています。

基準点(三角点)の精度検証結果
No 等級種別 基準点名 ずれの量 図番 区分名称
1 三等三角点 青柳 1.5m 西28-5 詳細原寸図
2 三等三角点 1.5m 西12-3 詳細原寸図
3 二等三角点 人見 1m 西12-4 詳細原寸図
4 一等三角点 三鷹村 3.9m 西12-9 詳細原寸図
5 二等三角点 経塚 0.8m 西22-2 縮小図
6 三等三角点 村山 2.2m 西36-3 縮小図
7 三等三角点 山崎 3.3m 西31-9 縮小図
8 二等三角点 上山口 5m 西26-2 縮小図
9 三等三角点 柳窪 5m 西10-8 縮小図
10 三等三角点 大沢 5.2m 西30-8 縮小図
11 一等三角点 長津田村 9.6m 西23-9 縮小図
12 三等三角点 北野 8.9m 西6-2 原寸図

(2)玉川上水
「西45-4 東ヶ谷戸」の羽村取水堰から「西5-6 牟礼」までの約30kmに渡って横断する玉川上水を現在の経路と比較したところ、直線部のずれは数mにとどまりました。一方、直線部から方向が変わる曲線部にずれの大きさが見られ、最大約20mのずれが確認されました。

(3)鉄道及び道路
鉄道17本、幅の広い道路28本、幅の狭い道路34本の中心線をGISで取得し、現在の地図と比較して最大ずれ量を計測し、全体のずれの大きさを5段階で評価しました。
 (評価点)
  5:ほとんどずれがない
  4:ほぼ地図の地物内に中心線が入る
  3:地図の地物内から少し中心線がずれる
  2:地図の地物内から大きく中心線がずれる
  1:大幅にずれている
 (結果)
  ・鉄道:平均 3.56
  ・幅の広い道路:平均 3.41
  ・幅の狭い道路:平均 2.65
検証では、鉄道と幅の広い道路の位置精度は比較的良いことがわかりました。また、図の区分による精度の差を見ると、詳細原寸図の平均は3.1、原寸図の平均は3.0、縮小図の平均は3.2 と、意外にも詳細原寸図が特に高精度というわけではありませんでした。

(4)河川堤防
多摩川左岸堤防の一部区間をトレースして1960年代の空中写真に表示されている堤防と比較したところ、一部に約10mのずれの区間があるものの、全体として中心線はほぼ一致していました。

(5)等高線
等高線は、詳細原寸図が1m間隔、原寸図・縮小図が5m間隔で描かれているため、それぞれ別に検証しました。

1)5m等高線(山間部)
谷地形の方向は概ね一致しているものの、谷線ずれがところどころ散見していました。他の図でも同様の傾向が確認されました。

2)1m等高線(多磨墓地)
多磨墓地周辺の1m等高線を基盤地図情報の5mメッシュ標高モデルから生成した1m等高線と比較したところ、最大で2m強の標高差が見られました。周辺の三角点の標高値は変化しておらず、人工改変も少ない地域であるため、図化時の誤差と考えられます。

1m等高線(多磨墓地)精度検証図

(6)まとめ
「東京西部」は多面体図法で作成されており、比較対象の地図とは投影法が異なるため単純比較には注意が必要ですが、以下の傾向が確認されました。
 ・高精度:三角点、鉄道、幅の広い道路、河川堤防
 ・やや誤差が大きい:玉川上水の曲線部、細い道路
 ・誤差が目立つ:等高線(特に1m間隔)
 ・図面による差:西36-6(縮小図)は全体に約10m東へずれ

しかし、当時の空中写真の解像度や図化機の性能を考慮すると、「東京西部」は現在でも十分に実用的な位置精度を備えていると評価できます。